内科日誌 2009.12.6 財務省が人を殺す!?

 事業仕分けで、漢方を保険の対象が除外しようという流れになったそうです。
薬局で売っている薬は医者が出す必要はない、とのこと。
本当にふざけるな、という思いです。
ここのところ腹が煮えくりかえって仕方がありません。

▽命がけで手術

 たとえば大建中湯などは術後の腸閉塞などに有効であることがさまざまな論文で証明されており、医療費の抑制にも非常に役立っています。
私が大学病院にいた時、漢方が専門でない上司からも使うよう指導され、医局員は皆、かなりの患者さんに使っていました。
使うのが当たり前だった薬も、保険の対象外になれば処方することができません。
入院中など、状態の悪い時はできるだけのことをしたいところですが、本当は安い薬を使えば助かるのに、使えなくて状態が悪くなってしまうことも多くなるでしょう。
状態が悪くなれば手術でどうにかしなければいけませんが、状態が悪いからこそ、手術は命がけになります。

▽小児が危ない!

 インフルエンザのときはよく麻黄湯が使われます。
インフルエンザに対する有効性はタミフルと同程度と多くの論文で報告されている薬で、タミフルが使えない小児にもよく使われています。
適切な患者に処方すれば、早ければ内服して3時間後に熱が下がり始めるという、魔法のような薬で、当院でも非常に好評をいただいています。
しかも、タミフルやリレンザより、圧倒的に薬価が安い。
しかし、そんな薬も誰にでも出せるわけではなく、年齢や全身状態、脈、汗の状態などを総合して判断しないといけません。
不適切な患者に処方すれば、治らない上にかえって副作用が強く出てしまう可能性もあります。
薬剤師は診察をすることができませんから、そういった難しい判断ができるはずがありません。
インフルエンザの迅速検査で陰性だったとき、とりあえずインフルエンザでもそうでなくても効果がしっかり出る麻黄湯で様子を見る、といったこともよく行われていますが、それができなくなれば、手遅れになってウイルス性肺炎などで死ぬ人も出てくるかもしれません。
特に心配なのは、命に関わる可能性の高い小児です。
財務省には子どもを殺す特権があるのでしょうか。
財務省の人は、自分の子どもが死んでも仕方ないとあきらめられるのでしょうか。

▽日本から漢方が消える!

 もう一つ心配なのは、保険から除外されることで、漢方を学ぶ医師がいなくなることです。
保険適応だからこそ、医師は自分の守備範囲と思って勉強を始めるのです。
かくいう私もそうでした。
保険から除外されれば、若い医師はまず勉強をしなくなるでしょう。
日本の医療費抑制と国民のQOLの改善に役立ってきた漢方の伝統は潰えてしまいます。

▽署名にご協力を

 今、小さな成果のために、たくさんの人の命が危険にさらされています。
現在、日本東洋医学会などが中心になって反対署名を集めていますが、予断を許さない状況です。
署名は12月7日まで。
当院でも署名を集めていますし、こちらのサイトで漢方保険はずし反対の電子署名も可能です。
ご協力のほど、よろしくお願いいたします。
☆☆関連参考サイト☆☆
社団法人日本東洋医学会
【ゆうゆうLife】漢方薬が保険から外れる!? 医師ら「治療に困る」「最先端の薬」
事業仕分け:漢方薬「保険適用外」方針 反対署名活動広がる--名張 /三重
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